働く障がい者が増えたのはよいが・・・

by ootsukablog, 2014年12月22日

ロクイチ調査(6月1日時点の障害者雇用状況)により
障がい者雇用率が発表になった。
障がい者雇用率が発表になり0.06ポイント増の1.82%。
しかも精神障がい者の人数が急増。25年度より24.7%伸び、27,708人が雇用されていると。

障害者雇用実態報告書では63万人もの障がい者が雇用されているというデータが。
5年前に比べて18万人以上も増加。

この数字を喜ばしくないとは誰も思わないだろう。

ちょっと気になることがある。

FVPで障がい者雇用のお手伝いをするときは
部門欠員への障がい者の「紹介」というやり方をとらないので
採用後もほとんど「順調」に就労が継続されている。

お邪魔するたびよくがんばってくれている。
こんなこともできるようになった。
こんなうれしいことがあった。
といった、よい報告を聞くことが多く、国の統計データもうれしい気持ちで
受け止めていた。

ところが、最近出席したイベントで
精神障がい者の就労支援において抜きん出た実績を有する支援機関の
トップの話を聞いてびっくりした。

A所長が問題提起でおっしゃった言葉が以下のとおり。

2.0%の雇用率を満たそうとするがあまり、
「誰でもいい」といわんばかりに強引に採用していく。

まだこの人は難しいよ、準備できてないよ、
というひとまで、どんどん就職がきまっていく。
その結果、退職者が増えている。
高い定着率が売りだったこの支援機関。
ここ1~2年、離職率がぐぐっと増えているデータが物語る。
タイミングは法定雇用率が2%になった時期からだ。

採用サイド(企業)の気持ちもわかる。
とにかく採用したい。
その気持ちはよくわかる。

わからないなりに、なんとなくイメージで
「普通っぽい」「大丈夫そう」「職務経歴的にいける」と判断してしまう。
コミュニケーションが大丈夫なら何とかなるだろうと思ってしまいたい。
気持ちが痛いほどわかる。

その方の中には「準備が整っていない方」もいらっしゃる。
見た目で採用してしまうことの危険性。

彼らは、仕事や生活の場面でなんらかの配慮が必要であるから
障がい者手帳を持っているわけだ。
それを踏まえて、さまざまな訓練や支援を経て、就職に向かう。
時間や手順が必要なのだ。

準備が整っているかどうかなんて
一回や二回の面接ではなかなか見抜けないと思う。
ここは、矢も立てもたまらず障害者を採用しなければならない
状況ではあるにしても
採用決定は慎重出なければならないと思う。

でないと
初期の精神障がい者雇用に躓いてしまい、
その後進められなくなってしまう恐れもある。

もう一方で、
FVPに相談に来られる企業の方々で、過去に採用し、
離職してしまった障がい者について
「特性や配慮についての一切の情報がなく、どうやって指導してよいかわからなかった」
「外部に相談する機関がなかった」
「紹介会社だったのでアフターフォローがなかった」
と異口同音におっしゃる。

差別したくないから、とか
できればいろいろスキルアップを、といった気持ちはわかるが、
健常者と同じような環境(フォローしないこともふくめ)が
「働きにくい環境」になってしまっていたとすれば、
離職してもしょうがないだろう。

また、相談されてお邪魔してみると
なんともかんとも、もう少し仕事が組み立てられるのに。。。
と思うような感じの業務しか提供できていない企業も激増している。

数合わせで採用しては、あとでものすごく苦労する。

「休みがちです。戦力にならないです。
ですけどカウントにはなってますし・・・それ以上は期待してないです」

聞けば聞くほど、悲しい。

採用して終わりじゃないこと、人事の方にいまさら釈迦に説法だが
急ぎすぎる障害者雇用は危険である。

「職域」「マッチング」「その後のフォローと体制」
このどれが欠けてもうまくいかない。

就労支援の方にも申し上げたい。
求めるものを売るな、必要とするものを売れ
といったのは松下幸之助。
企業が採りたいといっても「まだ早い」といわなければならないと思う。
慈善事業じゃないとおっしゃることなかれ。
結局、次の採用提案で行き詰まり、困るのは自分たちである。

急がば回れで、やっぱり慎重に王道正道を行くしかない。
採用側も、送り出し側も。

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