とある大手電子部品メーカーの執行役員のTさんと 会合でご一緒する機会があった。
FVPは障害者の雇用のお手伝いをしていると伝える。
するとTさん、
「10年ほど前、鹿児島で私が工場長をやっていたとき、 会社で初めての知的障がいの従業員を採用したんです」と おっしゃるではないか。
当時、知的障がい者の雇用義務はない時代であった中でなぜ?
思わず理由をたずねたところ、Tさんはこうおっしゃった。
「会社の方針として地域社会に貢献すると標榜しているわけです。 であればその方針は建前でなく実践しなければ意味がないでしょう。 ならば採用だということで踏み切ったのです」
Tさんは人事畑の方ではない。 技術、開発畑の生え抜きである。
採用した知的障がいのある従業員は、真面目にコツコツ仕事に取り組み、 今やりっぱな戦力になっているそうだ。
続けて少し謙遜しておっしゃる。
「特別支援学校の先生の熱意にほだされたからですよ。 そのあとも熱心にサポートしていただいたし」
法律が改正され、 知的障がい者の雇用も義務になったことをTさんにお伝えした。
「法律だから採用したわけじゃないけど、法律が変わったとき会社は慌てずに済んだのですね」とTさん。
地域に貢献をという思いで始まった知的障がい者雇用が、 めぐりめぐって会社に貢献できたというわけだ。
理念が浸透している企業の障がい者雇用は難しくない。
きっかけに恵まれれば、いとも簡単にバリアを超えていく。
このTさんの企業もその一例だと感じる。
一方、ところがこの「きっかけ」に巡り合えず 苦労されている企業がいかに多いことか。
制度や手続きが複雑だからなのだろうか。
手前みそだが我々FVPは、その企業にとっての「きっかけ」に ならせていただけると自負している。
ちなみに、「理念に忠実に」との思いで現場のTさんが、 知的障がい者雇用を進めたすばらしい会社。
それは、
京セラ
でした。